2026年8月の改正で、高額療養費制度に「年間上限」ができました。その集計期間が「8月〜翌年7月」と聞いて、こんな疑問を持った方はいませんか?
「じゃあ、確定申告の医療費控除も8月〜7月になるの?」
「2026年分は、1月〜7月の医療費だけ申告するの?」
結論から言うと、心配いりません。医療費控除はこれまでどおり1月〜12月です。この記事では、なぜ混乱しやすいのか、そして実務で何に気をつければいいのかを、やさしく整理します。
✔ この記事でわかること
- 医療費控除の対象期間は変わらない(1月〜12月)という結論
- なぜ「8月〜7月」という期間が出てきたのか
- 高額療養費で戻ったお金を、確定申告でどう扱うか
- 年をまたいで払い戻される場合の対処法
- 今からやっておくとラクな準備
結論:医療費控除は1月〜12月のままです
✅ 2026年分の確定申告では、2026年1月1日〜12月31日に支払った医療費が対象です。
7月で区切る必要はありません。8月以降の医療費も、これまでどおり合算して申告できます。
なぜなら、この2つはまったく別の制度だからです。
| 高額療養費の「年間上限」 | 医療費控除(確定申告) | |
|---|---|---|
| 制度の種類 | 健康保険の制度 | 税金の制度 |
| 期間 | 8月〜翌年7月 | 1月〜12月 |
| 窓口 | 加入している健康保険 (協会けんぽ・健保組合・市区町村) | 税務署 |
| 何が起きる | 上限を超えた分が払い戻される | 税金の一部が戻る |
💡 覚え方:「健康保険は8月始まり、税金は1月始まり」。役所が違えば、年度の区切りも違う——それだけのことです。
なぜ「8月〜7月」なの?
高額療養費制度では、もともと自己負担限度額の判定に使う所得区分が毎年8月に切り替わる仕組みになっています。前年の所得をもとに区分を決めるため、住民税の確定を待つ必要があるからです。
今回新しくできた「年間上限」も、この既存のサイクルに合わせて8月始まりになりました。健康保険の世界では自然な区切りなのです。
※改正の内容そのものは、記事37番「【2026年8月改正】高額療養費制度はどう変わった?」で詳しく解説しています。
ただし、1つだけ注意点があります
期間は変わりませんが、計算の仕方では高額療養費が関係してきます。
医療費控除額 = 1年間の医療費 - 保険金などで補填される金額 - 10万円
※所得200万円未満の方は「10万円」ではなく「所得の5%」
この「保険金などで補填される金額」に、高額療養費で戻ってきたお金も含まれます。差し引かずに申告すると、控除額が多すぎることになってしまいます。
例:2026年に医療費を50万円払い、高額療養費で20万円戻ってきた場合
50万円 - 20万円 - 10万円 = 医療費控除額は20万円
年をまたいで払い戻される場合はどうする?
ここが今回の改正でいちばん迷いやすいところです。
年間上限による払い戻しは「8月〜翌年7月」が集計期間なので、払い戻しが確定するのは翌年の夏以降になります。つまり、2月〜3月の確定申告の時点では、まだ金額が確定していない可能性があるのです。
国税庁のルール:見込額で申告してOK
この場合の扱いは、国税庁がきちんと定めています。
✅ 確定申告のときまでに金額が確定していない場合は、「見込額」を差し引いて申告します。
そして、後から実際の金額がわかったとき、見込額と違っていたら、次のように訂正します。
| 実際の金額が… | すること | 意味 |
|---|---|---|
| 見込額より多かった | 修正申告 | 控除しすぎていたので、税金を追加で納める |
| 見込額より少なかった | 更正の請求 | 控除が足りなかったので、税金を返してもらう |
💡 難しそうに見えますが、要は「わかる範囲で申告して、あとで違ったら直せばいい」ということです。完璧を求めて申告を遅らせる必要はありません。
どの年の医療費に対する払い戻しかを見る
もう1つ大事なのが、「その払い戻しは、いつの医療費に対するものか」という視点です。
例:2027年8月に、「2026年8月〜2027年7月分」の年間上限で15万円が払い戻された場合
この15万円には、2026年8月〜12月分と、2027年1月〜7月分が混ざっています。
→ それぞれの年の医療費に対応する分を按分して、該当する年の医療費から差し引きます。
按分の考え方は国税庁も認めていますが、計算が複雑になる場合は税務署に相談するのが確実です。
今からやっておくとラクな準備
- 医療費の領収書は「支払った月」がわかるように保管
年をまたぐ按分が必要になったとき、月ごとに分かれていると計算がぐっとラクになります - 健康保険から届く「支給決定通知書」を必ず保管
高額療養費がいくら戻ったかを証明する大事な書類です。医療費の領収書と一緒に保管しましょう - 「医療費のお知らせ」も活用する
健康保険から届くこの書類は、医療費控除の明細書のかわりに使えます - 年間上限は自分から申し出る
年間上限による払い戻しは、当面は本人からの申し出が前提です。医療費がかさんだ年は、健康保険に問い合わせてください
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よくある質問
Q1:高額療養費をもらったら、医療費控除は使えないのですか?
A:使えます。両方とも利用できます。ただし、高額療養費で戻った分を医療費から差し引いて計算する必要があります。
Q2:見込額がまったくわからない場合は?
A:加入している健康保険に問い合わせると、おおよその金額を教えてもらえることがあります。それでも不明な場合は、税務署に相談してください。
Q3:修正申告や更正の請求は難しそうです…
A:どちらも税務署で相談しながら手続きできます。更正の請求は原則5年以内であれば可能です。「間違えたら取り返しがつかない」というものではないので、安心してください。
Q4:家族の医療費もまとめて申告できますか?
A:はい。生計を同じくする家族の医療費は合算できます。所得が高い人がまとめて申告すると、戻る税金が多くなる傾向があります。
Q5:会社員でも確定申告が必要ですか?
A:医療費控除を使う年は、年末調整では処理できないため、自分で確定申告が必要です。スマホからでも申告できます。
ポイント&まとめ
- 高額療養費の「年間上限」が8月〜7月になっても、医療費控除は1月〜12月のまま
- 健康保険と税金は別の制度。窓口も期間も違うと覚えておけばOK
- 医療費控除の計算では、高額療養費で戻ったお金を差し引く
- 金額が未確定なら見込額で申告し、違っていたら後から訂正できる
- 年をまたぐ払い戻しは、該当する年の医療費に按分して差し引く
- 領収書と「支給決定通知書」を月ごとに保管しておくと、あとがラク
制度が変わると不安になりますが、確定申告のやり方そのものは変わりません。落ち着いて、これまでどおり1年分の医療費をまとめていきましょう。
※医療費控除と高額療養費制度の基本的な違いは、記事32番「医療費控除と高額療養費制度の違いとは?」で詳しく解説しています。
【出典】
- 国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm)
- 国税庁「医療費を補填する保険金等が未確定の場合」(所得税基本通達73-10関係)
- 国税庁「医療費を補填する保険金等の金額のあん分計算」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
※本記事は一般的な考え方を解説したものです。制度は変わることがあり、個別の事情によって取扱いが異なる場合があります。実際の申告にあたっては、税務署または税理士にご確認ください。

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