「子どもの生活費を援助したいけど、税金がかかるの?」「孫にお祝いを渡したいけど、いくらまで大丈夫?」——贈与税は、身近なのに意外と知られていない税金です。
この記事では、贈与税の基本的な仕組みを、はじめての方向けにやさしく解説します。
✔ この記事でわかること
- 贈与税とは何か、いくらからかかるのか
- 実は贈与税がかからないもの(生活費・教育費など)
- 「相続時精算課税」というもう一つの方法
- 亡くなる前の贈与が相続税に加算される制度
- やってしまいがちな失敗と、その防ぎ方
✔ この記事の結論
- 贈与税は1年間にもらった額が110万円を超えたらかかる
- 「あげた人」ではなく「もらった人」が申告して払う
- 生活費や教育費として必要な都度渡すお金には、原則かからない
- 亡くなる前の一定期間の贈与は、相続税に加算される(期間が3年→7年へ段階的に延長)
- 名義だけ子ども・孫の口座に貯める「名義預金」はトラブルのもと
贈与税とは?
贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
💡 大事なポイント:払うのは「もらった人」です。
あげた人ではありません。お金を受け取った側が、申告して納税します。
なぜ贈与税があるのか
もし贈与に税金がかからなければ、生きているうちに全財産を配ってしまえば、相続税を払わずに済んでしまいます。
そうならないよう、相続税を補う形で贈与税が設けられているのです。だから贈与税の税率は、相続税より高めに設定されています。
相続税の仕組みについては相続の基礎の基礎で解説しています。
年110万円までは贈与税がかからない
1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産のうち
110万円まで非課税
これを「基礎控除」といいます
ここを間違えやすい:「もらった人」ごとに110万円
⚠️ 「あげる人ごとに110万円」ではありません
もらった人が1年間に受け取った合計額で判定します。
例:Aさんが1年間に受け取った額
- 父から 100万円
- 祖父から 100万円
→ 合計200万円。110万円を超えているので、贈与税がかかります
申告と納税の期限
110万円を超えた場合、もらった年の翌年2月1日〜3月15日までに申告・納税します。確定申告と同じ時期です。
※110万円以下なら、申告そのものが不要です。
税率は「誰からもらったか」で変わる
贈与税には2つの区分があり、税率が違います。
| 区分 | どんな場合 | 税率 |
|---|---|---|
| 特例贈与財産 | 18歳以上の人が、父母・祖父母など直系尊属からもらった場合 | 低め |
| 一般贈与財産 | それ以外(夫婦間、兄弟間、未成年の子への贈与など) | 高め |
例:課税価格390万円の場合の贈与税額
- 一般贈与財産:53万円
- 特例贈与財産:48.5万円
同じ金額でも、親から子(18歳以上)への贈与のほうが税金は安くなります。
※税率は課税価格200万円以下で10%、3,000万円超で55%です(どちらの区分でも)。詳しい税率表は国税庁のサイトでご確認ください。
実は贈与税がかからないもの
「これも贈与税がかかるの?」と心配される方が多いですが、次のようなものは原則として課税されません。
- 生活費や教育費として、必要な都度わたすお金
(親が子の学費や仕送りを負担する、など) - 社会通念上、常識的な範囲のお祝い金・香典・お見舞い
- 常識的な範囲のお年玉
⚠️ ただし「必要な都度」がポイントです
「これから10年分の生活費」とまとめて渡したり、生活費として渡したお金を貯金や投資に回したりすると、贈与税の対象になることがあります。
もう一つの方法「相続時精算課税」
贈与税には、暦年課税(毎年110万円まで非課税)のほかに、相続時精算課税という制度があります。
どんな制度?
ざっくり言うと、「今は贈与税を安くしておいて、相続のときにまとめて精算する」という仕組みです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 特別控除 | 2,500万円まで贈与税がかからない |
| 基礎控除 | 2024年1月1日以後の贈与は、これとは別に年110万円の控除あり |
| 相続のとき | 贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算する |
| 注意点 | 一度選ぶと、その相手からの贈与は暦年課税に戻せない |
⚠️ 選ぶ前に専門家へ相談を
相続時精算課税は「一度選ぶと戻せない」制度です。有利になるかどうかは、財産の額や家族構成によって大きく変わります。自己判断で選ばず、税理士や税務署に相談してください。
【重要】亡くなる前の贈与は相続税に加算される
ここは特に知っておいてほしいところです。
亡くなった方から生前に受けた贈与は、一定期間分が相続財産に加算されて相続税が計算されます。「相続税を減らすために毎年贈与していたのに、結局加算された」ということが起こり得ます。
加算される期間が延びています
| 相続が発生した日 | 加算される期間 |
|---|---|
| 〜2026年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 2027年1月1日〜2030年12月31日 | 2024年1月1日から死亡日まで |
| 2031年1月1日以降 | 相続開始前7年以内 |
💡 段階的に3年→7年へ延長されます。ただし、2027年1月2日以後に相続が発生する場合、「3年以内」より前の分については合計100万円までは加算されません(経過措置)。
💡 なお、この加算の対象になるのは相続や遺贈で財産を受け取る人への贈与です。また、加算された分にすでに贈与税を払っていた場合、その税額は相続税から差し引かれます(二重課税にはなりません)。
やってしまいがちな失敗
失敗1:名義預金
⚠️ もっとも多いトラブルです
子や孫の名義で口座を作り、親が管理して入金し続けているケース。本人が口座の存在を知らず、通帳も印鑑も親が持っている——これは贈与とは認められず、親の財産(=相続財産)とみなされます。
防ぐには:
- 本人が口座の存在を知っていること
- 本人が通帳・印鑑・キャッシュカードを管理していること
- 本人が自由に使える状態であること
失敗2:あげたつもりで記録がない
口約束だけでは、あとから「本当に贈与だったのか」を証明できません。
防ぐには:
- 贈与契約書を作る(決まった様式はなく、手書きでも可)
- 銀行振込で渡す(現金手渡しより記録が残る)
- あえて111万円贈与して贈与税を申告する(記録が残る、という考え方もあります)
失敗3:毎年同じ額を同じ日に贈与する
「毎年100万円を10年間」といった贈与を続けると、「最初から1,000万円を贈与する約束だった」とみなされる可能性があります(定期贈与)。
防ぐには:
- 毎年その都度、贈与契約書を作る
- 金額や時期に幅を持たせる
よくある質問
Q1:夫婦間でお金を渡すのも贈与になりますか?
A:生活費として渡す分には問題ありません。ただし、まとまった額を配偶者名義の口座に移して貯めるような場合は、贈与とみなされることがあります。
Q2:住宅の購入資金を親に出してもらう場合は?
A:住宅取得等資金の贈与には非課税の特例があります(要件・期限あり)。金額も大きくなるので、実行前に必ず税務署や専門家に確認してください。
Q3:孫の教育費を出すのは贈与税がかかりますか?
A:必要な都度、教育費として支払う分には原則かかりません。まとめて渡す場合は「教育資金の一括贈与」の特例(要件・期限あり)を検討することになります。
Q4:110万円ちょうどなら申告は不要ですか?
A:110万円以下なら申告は不要です。ただし「もらった人の1年間の合計」で判定するので、複数の人からもらっている場合はご注意ください。
Q5:贈与税を払わなかったらどうなりますか?
A:あとから発覚すると、本来の税金に加えて加算税・延滞税がかかります。相続のときに税務調査で判明することも多いです。正しく申告するのが結果的に安く済みます。
ポイント&まとめ
- 贈与税はもらった人が払う税金。年110万円までは非課税
- 「あげる人ごと」ではなく「もらった人の1年間の合計」で判定
- 18歳以上が親・祖父母からもらう場合は税率が低め(特例贈与財産)
- 生活費・教育費を必要な都度渡す分には原則かからない
- 亡くなる前の贈与は相続税に加算される。期間は3年→7年へ段階的に延長
- 名義預金は贈与と認められない。本人が管理していることが大切
- 記録を残す(贈与契約書・銀行振込)
贈与は「家族を助けたい」という気持ちから始まるものです。だからこそ、あとで税金の問題でもめないよう、基本のルールを知っておきましょう。金額が大きい場合や判断に迷う場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
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最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
【出典】国税庁
- No.4402 贈与税がかかる場合(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm)
- No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
- No.4161 贈与財産の加算と贈与税額控除(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm)
※制度の内容は変わることがあります。最新の情報は国税庁のサイトでご確認ください。個別の判断については税理士・税務署にご相談ください。


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